「じゅうしょくぅ~!」
段々、酔いが回ってきたようだ。
「いいかぁ住職、おめえの口利きひとつでオレが極楽へ行くか地獄へ行くか決まるんだからよ、んだからよぉ、頼んどくぞぉ、分かってんのかおめえ」
酒がマワって目が据わり、鼻の下あたりを手の甲でなで回し始めたので、もうそろそろ始まるなと思っていたところだった。
「よぉ~くエンマさんに言っといてくれよなぁ、本堂建てる時だって、客殿作る時だって、オレぁよぉ」
そうそう!これこれ!いつものやつが始まった~!
「歴史あるこの寺に相応しいデカくて立派なものを作らねえとダメだっつったんだぞ。オレだけが言ったんだぞぉ!だからよぉ、よく言っといてくれねえと困るんだよ、な、住職。なにせオメエの口利きひとつでオレが極楽へ行くか地獄へ行くか決まるワケだからよ。いつもオメエの味方してきただろぉ、んだからよ、よく言っといてもらいてえんだよぉ」
何回聞いても飽きないハナシだ・・なにせこのヒトのキャラがスゴすぎて群を抜いている・・っはは。
「な、だからオレが死んだ時ゃよ、トクベツのお経をアゲてくれねえといけねえ。ハイ、このヒトを間違いなく極楽へ連れてってくださ~いっつうトクベツなヤツだぞぉ、分かってんかぁ?」
「ああ、いやいや、ワタシはエンマさんと知り合いでもないし、お経というのはそういう口利きをするためのもんじゃないんですよ。そもそも救ってくれるのはアミダさんだし、頼むとしてもそっちへお願いするのがスジってもんでしょう」
「ああ・・?ああ、そ~か、そ~か!そんじゃそのアミダさんによぉ~く言っといてくれよぉ」
「自分で言ってくださいよ!なんでワタシ経由なんですか?」
「そらオメエ、ボウズってもんはトクベツなんだからよぉ。こういう時のためにオレぁオメエにゴマすってきたんだからよぉ。こぉいう時に役に立ってもらわねえとよぉダメなんだよぉ、なにせオメエのクチサキ三寸でよぉ・・。オレぁダメなんだよ、オレが言ってもダメなんだよぉ、オレぁ行いがワルイからよぉ、オメエじゃねえとダメなんだよぉ、オレぁいつもオメエの味方してきただろぉ!んだからよぉ、よぉ~く言っといて欲しいんだよぉ・・オメエが言ってくんなかったら地獄へ落っこっちまうだろ・・そしたらそん時ゃよぉ・・化けて出ちまうぞぉ・・よぉ~く言っといてくれよぉ~頼んだからなぁ~じゅ~しょくぅ~!」
目を白黒させながら口角泡を飛ばし「なぁじゅうしょく~!」と、まくし立てていた姿を楽しく思い出していた。
懐かしいヒトです・・
kuuhaku